私には不幸しかもたらさなかった「働き方改革」

2010年代の後半に、突如として叫ばれるようになった「働き方改革」。私にとってみれば不利益しかなかった、本当に最低の政策でした。


「働き方改革」が叫ばれるようになる以前は、私はそれなりに充実したサラリーマン生活を送っていました。

私が働いていたのは銀行傘下の大手企業。
周囲からは「ブラック」と呼ばれることもある企業でしたが、不満は感じていませんでした。今にして思えば充実感を持って働けていたと思います。

それが、突如として叫ばれるようになった働き方改革によって、状況が一変することになります。

バリバリ働きたい人の気持ちはどうなるの?

私が入社した会社では、確かに急な休日出勤や夜勤もあり、月の残業時間は100時間を超えることもありました。

ただ、その分の報酬はきちんを貰えていました。
残業代はもちろん、休日出勤・深夜割増手当もありました。
何より、そういう働き方をする会社だということは当然理解したうえで入社してきているんです。しんどくてもその分お金が欲しいと思って自分の意志で入社したんです。

それが一夜にしてこれまでの働き方が認められなくなり、「残業することが悪」として扱われるようになりました。


「定時で帰りたい!」と言っている人がいてその人が定時で帰れるようにする政策は良いことだと思いますが、なぜかそれと一緒に「残業はダメだ」となるのは意味が分かりません。
私は定時で帰りたいなんて一言もいっていないのに。
私の働きたいという気持ちは無視ですか?

結果として、私の場合だと年収で約150万円のダウンとなりました。
こんなことに巻き込まれて、まったくもって納得がいきません…。

社内の空気もめちゃくちゃに

働き方改革によって、社内には成果主義が蔓延るようになりました。

別に成果主義も悪いことばかりではないとは思うのですが、上から「働き方改革だー!」と言われて勢いで始まった施策です。
そのあとの舵取りまで考えられているはずもありません。


働き方改革以前の社内には、もう少し幅広な評価基準がありました。
そこまで優秀ではないけど、残業とか仕事の持ち帰りとか気合と根性で成果を挙げている人――
自分の仕事は後回し(残業)で、後輩のサポートに回ってくれる面倒見のよい先輩――
休日出勤や急な夜勤・トラブル対応なんかに率先して出てくれる、プロジェクトにひとり居たら凄く助かる存在――


働き方改革後には、そういった人たちはいなくなりました。
(いられなくなった、のほうが正しいかもしれません。)

働き方改革により「与えられた同じ時間の中で、どれだけ成果を上げられるか」という評価基準になると、まずは多くの社員は自分の仕事以外には手を出さなくなりました。
そりゃそうです。損するだけですから。
代表電話が鳴って、そのままコールが切れるまで誰も電話を取らなかったこともありました。

もう少しすると、仕事をどんどん人に押し付けるようになりました。
仕事を押し付けた先輩は「今月も残業ゼロ!素晴らしい!」と評価され、仕事を押し付けられた後輩は「もっと残業を減らさないとダメじゃないか!」と言われる酷い状況でした。

仕事の押し付け合いにも限界がありますので、更に進むとどこかで仕事が集中する人が出てきて、やがてその人がパンクするようになります。
それがいろんな部署で出てきて、若手がどんどん辞めるようになっていき…。


正直私には、「働き方改革」によって労働環境が良くなったとはまったく思えませんでした。

私にとっては不幸しかもたらさなかった「働き方改革」

私はこの「働き方改革」に加え、コロナ禍で始まった「リモートワーク化」のふたつに心底嫌気がさして会社を離れてしまいましたので、その後の顛末は分かりません。
私はこんなものはいつか大きな社会問題になると思っていたのですが、今のところそうはなっていないようです。
私のいた会社が特別めちゃくちゃだっただけなのか、それともまだ目が向けられていないのか…。

いずれにせよ、日本全体に大きな変化をもたらした政策です。後年、検証される必要があるでしょう。


私にとっては不幸しかもたらさなかった「働き方改革」。
私の代わりにきっとどこかの誰かを救ったのだろう、と思うことでなんとか自分を納得させています。

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